報告書作成や活動のコツなども解説
工場などでさまざまな機械を扱ったり重いものを運搬したりする製造業は、ヒヤリハットが発生しやすい環境といえます。事故を防ぎ作業者の安全を守るには、ヒヤリハット活動が欠かせません。 この記事では、製造業でヒヤリハットが起きる原因や事例、報告書の作成方法やヒヤリハット活動のコツなどを解説します。ぜひ参考にしてください。
製造業の安全を守るヒヤリハット活動とは?
ヒヤリハットとは、「幸いにも事故は起きなかったが、事故につながるリスクが高い状況」のことです。「ヒヤリハットを記録して、事故が起きそうになった原因を分析する活動」を、ヒヤリハット活動と呼びます。ヒヤリハット活動をすると、製造現場の安全性が高まります。
ヒヤリハットの理解に役立つハインリッヒの法則
厚生労働省のサイトでは、ハインリッヒの法則について以下のように説明しています。
「同じ人間が起こした330件の災害のうち、1件は重い災害(死亡や手足の切断等の大事故のみではない。)があったとすると、29回の軽傷(応急手当だけですむかすり傷)、傷害のない事故(傷害や物損の可能性があるもの)を300回起こしている。」
傷害がないからといって危険因子を野放しにしていると、いずれ重大事故に発展する恐れがあります。製造現場の重大事故を防ぐには、ヒヤリハット活動が欠かせません。
※引用元::ハインリッヒの法則(1:29:300の法則)|職場のあんぜんサイト
リスクに敏感になれるKYT(危険予知トレーニング)
KYT(危険予知トレーニング)は、リスクを察知するための訓練です。KYTには、ヒヤリハットの報告例が役立ちます。 KYTのなかでもよく行われる訓練が、チーム体制で実施されるKYT基礎4ラウンド法です。KYT基礎4ラウンド法では、現状把握・リスクの根本的原因の追究・対策立案・目標設定の4段階を通じて、危険を余地して事故を未然に防ぐスキルを高めます。
製造業でヒヤリハットが発生する原因
製造業でヒヤリハットが発生する原因を解説します。 作業者の心身の状態や現場の状況しだいで、ヒヤリハットは発生しやすくなります。
作業者に焦りや気の緩みがあったため
ヒヤリハットは、作業者の心身の状態に問題があると発生しやすくなります。 緊張感などから生まれる焦りに加え、気の緩みもヒヤリハットにつながるため危険です。たとえば、熟練者がマニュアルを確認しないで作業して、ヒヤリハットを体験するケースがあります。
作業者に疲労が溜まっていたため
疲労が溜まっていると集中力が低下し、体も動きにくくなるためヒヤリハットが発生します。製造現場の責任者や監督者は、作業者に過剰な負担を強いないように配慮しましょう。
5Sが徹底されていないため
5Sが徹底されていないと、ヒヤリハットが発生しやすくなります。
5Sは、以下の5つの頭文字をとって5Sと呼ばれています。
・整理
・整頓
・掃除
・清潔
・しつけ
5Sが行き届いていない製造現場には、作業者の注意をそらすものや安全な動作を妨げるものが多く見られます。 環境を整備して、安全に働ける環境を整えなければなりません。また、日常的に5Sを徹底するためには、きれいな現場を維持する習慣づけが必要です。
作業者の知識とスキル不足のため
作業者が新人の場合は特に、知識とスキル不足が原因でヒヤリハットが起きやすくなります。経験が浅いうちは、自力でリスクを察知できません。 新人が製造現場に配属された時点で教育を行い、リスクに対する感度を高めましょう。
情報共有が徹底されていなかったため
マニュアルが周知されていない、ヒヤリハットの事例が共有されていない、といった場合もヒヤリハットにつながります。 また、情報共有したつもりでも、作業者側が正しく内容を理解していないケースもあるため注意しましょう。仮に、誤った方法で作業している人を見つけたら、速やかに指導してください。不安全な状態を放置すると、ヒヤリハットが発生してしまいます。
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【原因と対策】製造業で発生しやすい5つのヒヤリハット事例
厚生労働省の資料を見ると、製造業では以下の事故が発生しやすいと記載されています。
1.転倒
2.はさまれ・巻きこまれ
3.動作の反動・無理な動作
4.墜落・転落
5.切れ・こすれ
製造業で発生しやすい5つの事故にもとづき、ヒヤリハットの原因と対策を解説します。
※参考:令和2年飲食店の労働災害発生状況|厚生労働省
1.転倒
転倒とは、作業者が段差や障害物につまずいて転んでしまうことです。重いものを運んでいて周囲の確認を怠ったり、思わぬところに台車や工具が置きっぱなしになっていたりすることで、発生しやすくなります。転倒を防ぐには、以下の対策が挙げられます。
・運搬などの作業中は声かけをして注意を促す
・重いものは台車での運搬を義務づけ、安全性を向上させる
・暗い通路には照明をつけ障害物や段差を見やすくする
・通路を整備して、段差や滑りやすい部分をなくす
・5Sを徹底して物を片付ける
2.はさまれ・巻きこまれ
はさまれ・巻きこまれとは、稼働中の機械や不意に動いた車両などに作業者が巻きこまれることです。工場などの現場には大きな機械や車両が多く、不用意な行動は重大事故につながるリスクがあります。はさまれ・巻きこまれを防ぐには、以下の対策が挙げられます。
・機械の故障や点検は、必ず機械を停止させてから実施する
・非常作業用のマニュアルを作成し通達する
・機械の稼働部に覆いをつけ、作業者が触れないようにする
・車両を動かす際は「右ヨシ、左ヨシ、前方ヨシ」と指差呼称する
・作業者は運転手から見えにくい位置に行かない
3.動作の反動・無理な動作
動作の反動・無理な動作は、作業者の不自然な姿勢や、動作の反動などが原因の事故を指します。柵を乗り越えようとしたが足が引っかかり転んでしまったなど、本来するべきではない動作をしたときも、動作の反動・無理な動作に分類されます。動作の反動・無理な動作を防ぐために、以下の対策を検討しましょう。
・機械の上など、不安定な姿勢になる場所で作業しない
・長時間同じ姿勢を維持しない
・重いものを無理に持たない
・柵の乗り越え禁止など、不安全な行動をしないように作業者に通達する
4.墜落・転落
墜落・転落とは、バランスを崩したり足場が崩れたりして落下することです。高所から落ちると重大事故になるリスクがあるため、作業中の安全性や足場の確保を徹底せねばなりません。墜落・転落を防ぐには、以下の対策が挙げられます。
・墜落が懸念される場所に手すりや柵を設置する
・手すりや柵の強度を定期的に点検する
・高所で作業する際は声をかけ合って注意を促す
・そもそも脚立やはしごに上らなくて済むように、高い場所に物を置かない
5.切れ・こすれ
切れ・こすれとは、機械や器具に接触して体が切れたりこすれたりすることです。切れ・こすれを防ぐには、以下の対策が挙げられます。
・機械の故障や点検は、必ず機械を停止させてから実施する
・機械に安全カバーを設置する
・切れ・こすれが予想される作業では、耐切創手袋を着用する
・機械や器具は定期点検する
・安全な作業手順をマニュアル化して通達する
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製造業のヒヤリハット報告書に記載する内容
ヒヤリハット報告書は、ヒヤリハットの内容を記録して周知するための書類です。報告書に盛り込む内容は、以下のとおりです。
・ヒヤリハットの報告者名
・発生日時
・発生場所
・発生した際の作業
・発生した際の詳しい経緯 ・ヒヤリハットの原因と対策
伝わりやすいヒヤリハット報告書のポイント
他の作業者に情報共有するためには、伝わりやすい書き方がポイントです。専門用語には説明を加え、必要に応じて箇条書きを使うと要点を理解してもらいやすくなります。
また、ヒヤリハットが発生したその日のうちに、報告書をまとめさせることも重要です。ヒヤリハットから間が空くと、作業者の記憶が薄れて詳細が分からなくなってしまいます。
製造業でヒヤリハット報告を習慣化するコツ
忙しい製造現場では、ヒヤリハット報告が後回しにされる恐れがあります。製造業でヒヤリハット報告を習慣化するコツを解説します。
フォーマットを作成する
フォーマットが用意されていれば、報告に不慣れな人でも素早く報告書を作成可能です。必要に応じて選択式の項目を取り入れましょう。選択式であれば作業者が記載方法に悩まずに済むだけではなく、書式が整っているためヒヤリハットを分類しやすくなります。
提出するメリットを用意する
フォーマットである程度簡単に報告できるようにしても、報告書の提出自体を面倒に感じる作業者は少なくありません。ヒヤリハット報告書が上がってこない場合は、報告書の提出に対して、奨励金や査定への反映などのメリットを提案することをおすすめします。
業務としてヒヤリハット活動の時間を設ける
ヒヤリハットを報告するメリットを用意しても、忙しい製造現場ではヒヤリハット報告書が上がってこない場合があります。毎日の業務時間内にヒヤリハット活動を組み込むと、作業者が報告書を作成しやすくなります。
製造業におけるヒヤリハット活動のコツ
ヒヤリハット活動は、危険について対策してこそ意味があります。製造業におけるヒヤリハット活動のコツを解説します。
原因分析
なぜヒヤリハットが起きてしまったかを多角的に考え、根本的な原因を突き止めてください。根本的な原因が分からなければ、似たようなヒヤリハットが続き、最悪の場合重大事故が起きてしまいます。また、正確な分析のためには、事実を丁寧に記録したヒヤリハット報告書が必要です。
再発防止策を含む情報共有
ヒヤリハットを起こした根本的な原因を突き止めたら、関係者で集まって対策を考えます。ヒヤリハットによっては、製造の手順を見直すなど大がかりな変更が必要になる場合もあるでしょう。作業者任せにせず、監督者・責任者を交えて対策を考えてください。対策が決まったら、ヒヤリハットの事例と再発防止策を周知し、事故防止に努めます。
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まとめ
製造業で事故を防ぐには、ヒヤリハット活動が欠かせません。ヒヤリハット活動では、根本的な原因を突き止めて対策を講じます。事実を正確にまとめたヒヤリハット報告書を作業者に作成してもらい、事故防止に努めましょう。
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